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スポーツ界に浸透してきたセイバーメトリクスと、i-colorについて-前編-

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こんにちは。スポーツキッズコミュニケーターのMAKOです。

先日鳥越規央先生の講演に出席させていただきました。鳥規央先生は「勝てる野球の統計学」「プロ野球のセオリー」など本も多数執筆されている統計学の第一人者の先生です。

勝てる野球の統計学――セイバーメトリクス (岩波科学ライブラリー)

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プロ野球のセオリー (ベスト新書)

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 最近ではスポーツに限らず、TV「ネプ&イモトの世界番付」や「AKBじゃんけん大会」の監修など他の分野も幅広く手がけているとの事。

今回の講演では、スポーツでの統計分析活用事例を多数ご紹介いただきましたので、このMAKOのブログでは前編と後編に分け、前編では講演内で興味深かった内容のご紹介、後編では私が活用しているi-color統計学との違いとその活用法についてまとめてみます。

セイバーメトリクスとは 

アメリカ野球学会(Society American Baseball Research)の頭文字と統計学metricsを組み合わせてできた言葉が『セイバーメトリクス』。アメリカのプロ野球学会において、野球を数値的にデータ分析し、統計学的根拠を加えて選手の評価・チームの戦略などを考える手法です。

ブラッド・ピット氏が演じた『マネーボール』という映画を観た方は馴染み深いかと思います。

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 この映画は実在する大リーグチーム、オークランドアスレチックスのゼネラルマネージャービリー・ビーンが経営危機に陥った球団を再建していく実話です。その戦略がまさにセイバーメトリクス(野球統計学)を用いたもので、他球団とは違う視点で選手をスカウトし埋もれていた戦力を発掘する事でチームを強くしていったのです。そして今や大リーグでは32球団全てに専属の統計アナリストがいます。

日本野球界でのセイバーメトリクス活用例 

『データに基づいた野球』という意味で日本で最初に導入したのはID野球で有名な野村克也と言えるでしょう。しかし野村氏は自身の経験値から算出したデータ分析です。客観的な数値に基づいたセイバーメトリクス(野球統計学)を日本で初めて導入したのは、千葉ロッテマリーンズボビー・バレンタイン元監督です彼は統計学の専門家を招き入れて積極的にデータ分析を活用し、Bクラスだったチームを2位に押し上げました。しかしこの戦法は当時のフロントやコーチ陣に受入れられず彼は退団する事に。その後約10年間チームはBクラスに逆戻り。そしてファンを中心に監督復帰を望む声が高まり、2004年にバレンタイン監督が復活。彼は「予告先発制」を活用し、予告先発投手に対するデータ分析を行い先発投手に強いバッターを優先的に起用する、つまり打順を日々入れ替える新戦法を取ったのです。これが功を奏し、翌年2005年はパ・リーグ優勝後、日本シリーズ阪神タイガースに4勝0敗で圧勝し日本一になったのです。
その後北海道日本ハムファイターズ東北楽天ゴールデンイーグルス等、パ・リーグ球団が積極的にセイバーメトリクスを導入しています。
近年ではセ・リーグ読売ジャイアンツでもデータ分析結果に基づき「狙えるゾーン以外の球は無理に振りに行かず見逃す」という戦略を取り、阿部慎之助選手を筆頭に打率アップという好成果を出しているそうです。

データ戦略が日本野球界の慣例を変革する 

今までの日本野球界では「監督が総指揮官」として位置づけられていたため、監督が変わると1軍コーチ陣から2軍コーチ陣まで監督の意向で入れ替えが行われて来ました。しかしセイバーメトリクスを活用している球団の場合フロントの判断により、1軍監督を変更しても他のコーチ陣まで総入れ替えする事はしません。このようにセイバーメトリクスを導入した球団は、コーチが担当した選手に1対1でアドバイスし育て上げていく方法をやめ、チーム全体で各選手の強みを育て上げていく『チームティーチング』に変革していったのです。これは「監督の采配が全て」という長年継承されてきた野球界の慣例を変え始めたと言えるでしょう。

セイバーメトリクスの課題

これら数値的データは各スポーツ分野で充分活用し得るものですが課題もあります。

★動き続ける団体スポーツでの活用の難しさ

野球やゴルフと言った「止まる時間があるスポーツ」の場合、頭の中でデータを思い起こし整理する時間があるため、これらデータ分析が活用しやすいようです。野球では必要に応じてコーチからのサイン指示までもらえるのですから、まさにセイバーメトリクスに適したスポーツと言えるでしょう。

しかしバスケットボールやサッカーのように動き続けるスポーツではどうでしょうか。目の前に現れた選手が苦手な動きは何かを、頭脳に刻み込んだデータから瞬時に抽出してベストな動きを取るのは難しいでしょう。また、野球のピッチャー対バッターのように1対1ではなく、周りに多数の選手がいるスポーツの場合、相手選手1人ひとりの分析データがあっても、それを一気に複数人数分考え判断するのは至難の業でしょう。
先生曰く「それらスポーツの場合、データが活かされるのはボールを持った選手ではなくオフザボールの選手達。彼らが向き合っている相手選手との距離感や相手の動きを封じる方法をデータ分析すれば充分活用できるのではないか?」とアイデアを提示されていました。

★個人のメンタルの影響 

例えば野球の投手をデータ分析して、先発向きか抑え向きかを算出したとします。そして数値データ上「この選手は抑え向きの投手だ」という検証結果が出ても、メンタル的に追い込まれた場面が苦手で実力が発揮しにくい投手もいるでしょう。

サッカーのPK戦の分析で後攻4番目のキッカーが最も決定率が低いという分析結果が出ていました。この分析から考えれば「4番目のキッカーはエースストライカーを起用する」という解答が出るでしょう。しかし、女子サッカー日本代表のエース澤穂希選手は「私はPK戦はひどく緊張するため本当に嫌いで、いつも一番後ろの方に回してもらっている」と答えているのを聞いた事があります。

このように数値データのみで選手を当てはめても、メンタルや性格面で適しているかも組み込まないとデータが生きてこない場合もあるのです。

前編まとめ

日本スポーツ界において野球以外はさほど浸透していないと思っていたセイバーメトリクスが、予想以上に多くのスポーツ競技で活用され始めている事を知り嬉しく感じました。東京オリンピックも近づきつつある今、統計データ分析を活用していないスポーツに関わっている方にも是非興味を持っていただき、戦略のひとつに取り入れて欲しいと強く感じました。
セイバーメトリクスにより、投手の勝利数やワールドカップでの優勝チームの予測などを数々言い当てている鳥先生。時には「ある選手のホームランはどこに飛ぶ確率が高いのか」というTV企画でホームランのホットスポットまで算出していらっしゃいましたが、まさに大好きなジャンルであるスポーツのデータ分析を楽しんでいるようにお見受けしました。来月発売予定の先生の著書『スポーツを10倍楽しむ統計学』も熟読必至です!(次回は後編にてi-color統計学も交えた考察を5月1日アップ予定です)

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